大判例

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仙台地方裁判所 昭和25年(行)8号 判決

原告 大内友三

被告 宮城県知事

一、主  文

被告が昭和二十五年二月十三日原告の訴願に対してなした裁決はこれを取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、その請求の原因として、訴外仙台市長は昭和二十四年六月三日仙台市の特別都市計画事業として施行する土地区劃整理の必要上原告所有の仙台市大町五丁目二十七、二十八、二十九番地の宅地に対する換地予定地として右同番地の一部第三十二ブロツク三十一号約二百六坪の土地を指定したので、原告は同年七月三十一日被告に訴願したところ、被告は昭和二十五年二月十三日本件換地予定地の指定処分に対しては訴願が許されないとしてこれを却下した。

しかしながら特別都市計画法第二十六條は同法及び同法に基いて発する命令によつてなす処分について都市計画法第二十五條を準用し、右法條においては訴願を許しているのであるから、本件換地予定地の指定処分に対し訴願が許されることは明らかである。のみならず、特に新憲法が行政処分に対し廣く不服申立の途を拓いている点に照らし被告の見解が誤であることは疑う余地がない。從つて被告がなした前記却下の裁決は違法であるから、その取消を求めるため本訴請求に及んだ次第であると述べた。(立証省略)

被告訴訟代理人は原告の請求を棄却するとの判決を求め、本件換地予定地の指定処分について訴願が許されるとの点を除いて請求原因事実は総てこれを認める。都市計画法第十二條第二項は同法に「別段の定」ある場合を除く外、総て耕地整理法を都市計画事業のため施行する土地区劃整理に準用すると定め、耕地整理法第六條は同法に別段の定めある場合を除くの外(同法に本件のような場合異議が許されるとの規定はない)「土地の所有者、占有者関係人其の他整理施行地に付権利を有する者は耕地整理の施行に対して異議を述ぶることを得ず」と規定している。しかして原告が本件について指摘する都市計画法第二十五條の規定は前記同法第十二條第二項にいわゆる別段の定に該当しないのであるから、本件のような特別都市計画事業として施行される土地区劃整理についても耕地整理法によつて施行される耕地整理に対すると同様訴願は許されない。抑々耕地整理法第六條が耕地整理について原則として異議申立を許さないとした所以のものは、事業の性質が著しく技術的で、かつ実際上関係者全部を満足させるような設計は殆んど不可能なためで、もし一部関係者の異議申立によつてこれを変更するようなことがあれば、更にその他の関係者からも異議申立が必然的に提起され、ついに設計全体にくるいを生じ、收拾がつかなくなる虞のあるためである。そして特別都市計画事業として施行される土地区劃整理の場合はこのことが一層強くいい得るのであつて、土地区劃整理を耕地整理組合が施行する場合と行政廳が施行する場合とで遮般の事情に差異はない。しかも後者の場合と雖も決して行政廳が独断專行しているわけでなく、土地所有者及び借地権者から選挙された者によつて構成される土地区劃整理委員会(特別都市計画法第十一條第四項)に諮問して実施されるものであるから、計画全体から見れば必ず公共の福祉に合致するように処理されている。從つてこの点からいつても、特別都市計画事業として施行される土地区劃整理について訴願を許す必要は毛頭ない。

以上の通りであるから、被告が本件換地予定地の指定処分に対する原告の訴願を却下した前記裁決には何等違法の点がないと述べた。(立証省略)

三、理  由

訴外仙台市長が昭和二十四年六月三日仙台市の特別都市計画事業として施行する土地区劃整理の必要上原告所有の仙台市大町五丁目二十七、二十八、二十九番地の宅地に対する換地予定地として右同番地の一部第三十二ブロツク三十一号の土地約二百六坪を指定したこと、及び原告が同年七月三十一日被告に訴願したところ被告は昭和二十五年二月十三日本件換地予定地の指定処分について訴願が許されないとしてこれを却下したことは当事者間に爭のないところである。

よつて本件換地予定地の指定処分について訴願が許されるかどうかの点について按ずるに、特別都市計画法第二十六條は同法によつてなす処分(本件換地予定地の指定処分が同法第十三條によるものであることは前記の通りである)について都市計画法第二十五條を準用し、同法條によれば同法に規定した事項に付行政廳の爲した処分に不服あるものは訴願できる旨を定めているから、本件換地予定地の指定処分について訴願が許されることは前記各法條の明文上疑を容れないところである。被告は、かように解釈すると、都市計画事業の性質が著しく技術的で、且つ実際上関係者全部を満足させるような設計は殆ど不可能なので、もし一部関係者の異議申立によつて之を変更するようなことがあれば、更にその他の関係者からも異議申立が必然的に提起され、遂に設計全体に狂いを生じ收拾がつかなくなる虞がある、そしてこのことは特別都市計画事業として施行される土地区劃整理の場合は一層強く言い得る、と主張するけれども、特別都市計画事業として施行される土地区劃整理の場合であつても関係者全体の負担の公平は極力之を期しなければならないから、仮に所論の事情があつたとしてもそれが不公正なものである限り関係者は之を甘受しなければならない理由はない。この場合訴願が許されることは施行者の側から言えば煩瑣に堪えず、遂に設計全体に狂いを生じ、收拾がつかなくなることがあるかも知れない。けれどもそれは不公正な土地区劃整理を設計した結果であつて止むをえない。而しながら、このことは関係者の訴願は全て之を認容し、之を採用しなければならないと言う結論にはならないのであつて、採用の價値のない訴願が棄却されるべきことは当然であるから、土地区劃整理にして公正なる以上被告の言うように收拾がつかなくなることはありえない筈である。從つて被告の前記主張は之を採用することができない。

以上の通りであるから、本件換地予定地指定処分について訴願は許されないものとして原告の訴願を却下した本件裁決は違法である。

よつてその取消を求める原告の本訴請求には理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九條を適用して主文の通り判決する次第である。

(裁判官 松尾巖 伊藤正彦 片桐英才)

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